助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
「チャンスって、何ですか?」

そう、私が聞こうとすると、またもや加藤さんの顔が近づいてきた。
さっきよりも比べ物にならないほど、その距離は近い。
鼻先が当たる。
ど、どうしようどうしよう!
反射的に目を瞑り、顔を逸らすと、ぱったりと、加藤さんが私の肩の上に頭を乗せた。
そしてそのまま……。

「加藤さん……おーい……加藤さーん……」

肩を揺さぶってみた。
頭を軽く叩いてみた。
……うん。
全く、起きない。
すっかり寝落ちしてしまったようだ。
加藤さんの全体重が私の体にのしかかっているおかげで、身動きが取れない。

「加藤さんー起きてくださいー!加藤さーん」

自然と加藤さんの耳元で話すような位置関係になっているので、加藤さんの鼓膜が破れない、ギリギリの声の大きさでもう1回呼びかけてみる。
が、一向に目覚める気配がしない。
加藤さんの、規則正しい寝息が私の耳に入ってくる。
少しだけ、顔を動かして加藤さんの寝顔を確認してみる。
仕事中には見たことがないような、穏やかな顔だった。
目をつぶると、余計にまつ毛の長さが分かる。
くそー……寝てる時は可愛い顔しやがって……。
今スマホが手元にあったら、絶対写真撮ってやったのに……。
残念ながらスマホは、少し離れた床に放置された鞄の中に入っている。
そう言えば、あれから河西君達は大丈夫だったんだろうか。
それに井上さんは……私が加藤さんと居酒屋出て行っちゃって……どう思ったんだろう……。
そんなことを考えている内に、段々と目を開けているのが辛いほどの眠気がきていた。
ちょっとだけ、目を瞑ろう。
その間に、加藤さんも目が覚めるだろうし、そのタイミングで、きっと私の事を叩き起こすに違いない。
それまで……ちょっとだけ……。


「うわあ!!!!」
次、私が目を開けたのは、加藤さんが奇声をあげながら私をソファから転がし落とした時。
背中が見事に床にクリーンヒットしたので、その痛みですっかり目を覚ますことになったのだが……。
その時の窓の外は、夜から朝にちょうど変わりかけ。
紫からオレンジのグラデーション状態だった。
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