助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
そうこうしている内に、加藤さんには私の……加藤さんの住処とは比べ物にならない、オートロックもないアパートの前まで連れてきてもらった。
ここは、大学時代から住んでいるところ。
家賃は、駅前のマンションより2万は安い。
さらに、治安は比較的良い地域なのと、大家さんがとても良い人ということもあったので、節約もかねてこの物件を選んだのだ。
加藤さんは、怪訝な顔で私のアパートの外観を見ているが、私にとっては一人暮らしを始めてからのかけがえのない、私という人間を作る為に必要不可欠な環境だったりする。
部屋の中も、自分が過ごしやすいようにカスタマイズしまくっているので、ここ以上に心地いい場所なんて、そうそう見つからないのだ。
だけど……。

「あの……加藤さん……?ここのアパートの前にこの高級車は目立っちゃうんで……そろそろお帰りいただいた方が……」

私がそう言うと、ぎろりと睨まれる。
これは、あれだろうか。

「あのぉ……さすがに家は散らかってるので……」

特に今日なんて、昨日出社する前に洗濯して干したショーツが葡萄の実のようにぶら下がっている。
何が悲しくて、そんな部屋に上司を迎え入れなければならないのか……。

「僕が、体調不良者の家にのこのこ転がり込む、不埒な人間だと思うの?」
「いえ、滅相もございません」

良かった。
そう言うつもりでは、なかったのか。
ん?じゃあどうしてじっとアパートなんか見てるんだろう……。

「あの……それじゃあ私はここで……」
「ねえ、高井さん。朝食は何派?」
「……は?」
「ちなみに僕は洋食派」
「……私は……シリアルと豆乳です」
「ふーん。わかった」

わかった?

「何号室?」
「201です」

反射的に答えてしまった。

「わかった。じゃあ、家帰ったら一旦パジャマにでも着替えておいて。風呂には入らないでね」
「ど、どういうことですか?」
「20分間で、着替えくらいはできるでしょう?じゃ」

そう言うと加藤さんは、さっさと運転席に乗って今来た道を戻ってしまっった。

「何だったんだ……?」

とりあえず、人に見られても良いようにパジャマがわりに使用しているワンピースを着用し、ついでにショーツの葡萄は片付けておいた。

すると、まさに20分きっかりにチャイムが鳴った。
その相手は加藤さんだった。

「食料調達してきてあげたから」
「あ、ありがとうございます……」

袋の中には、美味しそうな菓子パンやシリアル、女性が好きそうな色とりどりの野菜の惣菜が入っていた。

「あの、加藤さん……中……入りますか?」

今はショーツの葡萄はないし、他見られて困るものはない。
掃除機かけてないから埃っぽいところくらいか……。

「いや、いい」

即答で断られた。

「あ、そうですか……」

これで、話を終わらせるのが普通だろう。
でも、加藤さんはじっと黙ったままだ。

「あの……加藤さん?話があるのでしたら……」

すると。

「昨日は……ごめん」
「……え?」

加藤さんが、いきなり頭を下げてきた。
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