助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
「……あ……」

き、聞かれただろうか……今の……。

「いい加減、早く決められないの?」

このクソ上司!
いつからいたんだ、いつからー!
待ってたんなら声くらいかけろよ!
ぎろりと横で縮こまっている河西君を見る。

「俺は言った」

と口パクで言っていた。
くそー裏切り者!

「すみませんね!今……決め……た、ところですから!」

どうしよう……ここはやはり甘いコーヒーで幸せに浸るか、あえてきつい栄養ドリンクで攻めの体制に入るか……。

「……なんで迷ってるの」
「………色々考えることがあるんですよ!」
「ふーん」

クソ上司が、私の弁当をじっと見ている。

「なんですか?人の弁当ジロジロ見て」
「……ずいぶん茶色いなと思って」
「はあ!?」
「僕はもっと、色がある方が好みなんだけど」
「あんたの好みなんか知らん!」
「まあでも、特別に僕に弁当を作ってきてもいい許可くらいは、あげてもいいよ」
「全力でお断りします」

なんの罰ゲームだよ。
上司に弁当作ってやるって。

「おい、落ち着け、上司だぞ!」

と河西君が止めに入ってくれたが、ここまでスイッチを入れられると、止めたくても止まらない。

「じょ、上司だからって、年上馬鹿にすると、痛い目に遭うんだからなー!」
「へえ?」

私「以外」の女子には大変評判が良いと言われる顔が、ぐいっと私に近づいてきた。
……うっ、近くて耐えられる顔とか、羨ましい。
決してかっこいいと思っているわけではない。
羨ましいだけだ。

「どうなるの?僕に教えてよ」

近い、顔近い!息がかかる!
爽やかなミントの香りがする……ってそうではなくて!
対照的な妖艶な笑みに、ほんの少しドキッとする。
それは断じて、断じてかっこいいと思ったわけではない。
本当に、断じて、あってはならない。
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