助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
あの……飲み会の次の日の加藤さんが頭をよぎっては、無理やり脳内から消し去る努力をしている。
そうでないと、心が持たないのだ。
色々な意味で。
それに、最近、LINEに訳がわからないスタンプが1個だけ送られる、という謎現象も起き始めていた。
ブロック……にするのもバレた時怖いので、非通知状態にだけはしているが……既読無視は1週間続いている。
ミーティング中、いつそれをつつかれるだろうかと最初気が気じゃなかったが、今のところは何も言われてはいないんで、私も知らないふりをし続けている。
ちなみに念のため、もし指摘された時のために

「すみません、プライベートが多忙過ぎまして」

と言い訳をするように、台本だけは用意してある。

「はぁ……」
「どうした、大きなため息なんかついて。幸せ逃げるぞ」
「考えることが多くて……頭パンクしそうだよ……」
「ふーん……」

河西君が何か考え込んでしまった。
どうしよう……何か、無駄に脳みそを使わせてしまってる……?
もうこの話は、終わりにしたい。
自分のためにも。

「あ、あのさ河西君、この件もう終わりに」
「じゃあ俺と付き合う?」
「……………………は?」

聞き間違い、じゃないだろうか?

「河西君?今、何と?」
「むしろ、結婚しよう」

聞き間違いどころかグレードアップしやがったー。

「何言って……!」
「俺さ、来年ここの会社やめようと思って」

待て待て。
付き合う、結婚するまでは一応脈絡は繋がってるが。
付き合う、結婚、からのこの会社やめる、というのは、話題をぶった斬りすぎじゃないか?
それに。

「入社して1年で辞めるってどういうこと!?」

最近の風潮では少し変わってきてるのかもしれない。
が、それでも入社して1年ですぐ辞めるのは、キャリアとして大きな傷がつき、次の転職先が決まりづらくなる。
特に大手企業であれば。

「実は、起業を考えててさ」
「起業!?」

すごい……。
河西君、そんなこと考えてたんだ……。

「ほほー!すごいね起業なんて!どんなことするの……?」
「それなんだけどさ、高井さん」
「ん?」
「一緒に、やらない?」
「……はい?」

その後、河西君が教えてくれた起業内容というのは、私が夢見ていた

「私はもっと上を向いて歩ける人を増やしたい。世の中色んな仕事があって、あなたを必要としてるところが他にもあるよって伝えたい」

という夢が、叶いやすい仕事内容だった。
プロポーズというのも割と本気らしかった。
その理由としては……。

「高井さんとだったら仕事面相性いいかなと思うし……一緒に仕事もプライベートも飽きなさそう」
「それって、恋愛感情じゃないじゃん」
「今時恋愛より、居心地の良さじゃね?少なくとも、加藤さんよりは俺の方が……高井さんとしては、悪くはないんじゃない」
「んー…………」

そう、なのか?

「まあ、ちょっと考えみてよ。俺とのこと」

そう言うと、河西君はさっさと何事もなかったかのように外出してしまった。
その場面を、加藤さんが見ていたと知ったのは、それから数時間後のこと。
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