助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
Fight2:まさか僕以外の奴となんか、食事に行かないよね?
糖分とカフェインがたっぷり詰まってそうな、甘いペットボトルのカフェオレを、クソ上司が渡した20円+自腹で購入してから、重〜い足取りでオフィスに戻る。
普段ならカロリーを気にして飲まないような500mlサイズだが、こんな時は飲まなきゃやってられん。
自動販売機にもし酒が売っていたら、間違いなく買っていただろう。
すでに河西君は、自席に戻っていた。私と目が合うと
「お疲れ〜」
と言ってきた。
私は足早に河西君の席に向かい
「裏切り者〜……」
と、椅子をぐらぐら揺らしてやった。
「触らぬ神に祟りなし……って言うだろ〜」
祟りって……すごい言われようだな……さすがクソ上司。
「うう……白状もの〜……」
「さすがに俺だって、睨まれたくないよ、さすがに」
「だからって、一人であの場に置いておく!?せめて声かけてよ!そしたら私も逃げられたのにー」
私は、先ほど買ったカフェオレの蓋をあけて、居酒屋で酒をあおるように一気飲みをした。
「おおー、いい飲みっぷりー」
ぷはぁ……と口を手でぬぐい、どんっとカフェオレのペットボトルを河西君のデスクに置いてやった。
「ねえ……あの人なんて言ったと思う?他の営業が全部ダメだったリストを全部私にやらせたんですって!はぁ、何それー!?」
それを聞いた河西君が、目の色を変えた。
「マジかよ、それって超すごいことじゃね!?」
「どこがよ!ただの嫌がらせでしょ!?パワハラでしょ!訴えていいでしょこれ!」
「……それってさ、高井さんに期待していたから、そういう難易度高い仕事させたんじゃないの!?」
「そ、そんなわけないじゃん」
「そうかな……あの人、評判聞く限りそんな無駄な事するような人には思えないんだけど……」
「さっきのを見てそれ言える!?」
何で河西君は、それほどまでに、あのクソ上司の肩を持とうとするのだろう。
「……高井さんがそれで良いなら構わないけど……でも、同じ仕事を任されている同僚としては、高井さんがすごく羨ましいよ」
「羨ましい?」
この言葉の意味をどう捕えていいか分からないでいると……
「あの人、河西君に色目使ってる……」
「やだ、加藤さんにもかまわれてるのに、それだけじゃ足りないってこと?」
「あんなどこにでもいる地味な子がどうして……」
出た……。
陰でこそこそ言ってないで、本人に直接言いなさいよ……。
ワークライフバランスが比較的守られる、営業事務の契約社員として働いている女性陣。
彼女達の本業は、もっぱら終業後に行われる合コン、婚活だという噂もある。
仕事の質よりも、流行のメイクやネイルを追いかけている時の方が、よっぽど有能さを発揮することだろう。
そのネイルや、メイクをする時間は一体どこにあるんだよ……。
いっそ分けてくれよ……。
「気にすんな。加藤親衛隊だろ?あれ」
いえ、あなたの親衛隊でもありますけどね。
「でさ、高井さん、さっきの件だけど」
「さっきの件?」
何か話したっけ?
「ほら、一緒に食事に行こうって話したじゃん。この後どう?」
そうだっけ?
でも、乗りかかった船だ。
今日は酒でも入れなきゃやっていけない。
「いいねいいね!他誰誘う?いっそマネージャー以外の営業のメンバー全員に声かけて、ぱーっとやろうよ!」
「いやだからね、そうじゃなくて……」
と河西君が話したところで
「高井さんいらっしゃいます?」
私のチーム……つまり、クソ加藤マネージャーのチームを担当している営業事務、井上智絵里さんが息を切らせて走ってきた。
クソ上司の親衛隊と違って、仕事は真面目で丁寧で早い。
それなのに昇進欲が一切ない。
勿体無いと、別のマネージャーが泣きながら井上さんを説得しようとしたのを1度見かけたことがあった。
問答無用で
「せっかくのお誘いですがお断りします」
と言われたマネージャーの顔は、意を決して告白したのに振られたそれと似ている。
……そのマネージャーは、女性ではあるが。
「は、はい!ここにいます!」
年齢は井上さんの方が年下だが、社歴は上なので、敬語で話すようにしている。
「あ、よかった……いらっしゃったんですね」
「ど、どうしたんですか!?」
「それが、高井さん宛にクレームで……」
「クレーム!?」
クレーム処理自体は、今まで1度もしなかったわけではない。
とはいえ、前職ではせいぜい数ヶ月に1度。
それに、私自身に対するクレームというよりは、サービスに対するクレームばかり。
私は仲介くらいしか対応せず、実際に対応したのは別の部署の人間だった。
なので、いざ私自身にクレームがきた場合の対処法はマニュアルレベルしか知らない。
ど、どうしよう……。
「と、とにかく今、折り返し連絡をすると言って電話切りましたので……急いで対応お願いします」
「分かりました!」
まずは、スピード対応……だっけ。
「どこの企業様ですか!?」
「ぽんぽこ幸せ株式会社です」
ついさっき……口説き落としたあそこかー!
でもどうして……。ちゃんと丁寧に説明したはずなのに。
「何でも、高井さんに騙されて契約をさせられたとかおっしゃってて」
契約どころかまだアポ段階だし!
でもこういう場合どうしたら……。
「と、とにかくすぐ来て対応をお願いします!」
「わっ、分かりました……」
とにかく、やってみるしかない。
「なんか、大変そうだな。手伝えることある?」
河西君が声をかけてくれたが、タイミング悪く河西君の電話が鳴ってしまう。
「やばっ……」
「お客様優先だから、こっちは気にしないで」
私はそう言うと、足早に自分のデスクに戻った。
普段ならカロリーを気にして飲まないような500mlサイズだが、こんな時は飲まなきゃやってられん。
自動販売機にもし酒が売っていたら、間違いなく買っていただろう。
すでに河西君は、自席に戻っていた。私と目が合うと
「お疲れ〜」
と言ってきた。
私は足早に河西君の席に向かい
「裏切り者〜……」
と、椅子をぐらぐら揺らしてやった。
「触らぬ神に祟りなし……って言うだろ〜」
祟りって……すごい言われようだな……さすがクソ上司。
「うう……白状もの〜……」
「さすがに俺だって、睨まれたくないよ、さすがに」
「だからって、一人であの場に置いておく!?せめて声かけてよ!そしたら私も逃げられたのにー」
私は、先ほど買ったカフェオレの蓋をあけて、居酒屋で酒をあおるように一気飲みをした。
「おおー、いい飲みっぷりー」
ぷはぁ……と口を手でぬぐい、どんっとカフェオレのペットボトルを河西君のデスクに置いてやった。
「ねえ……あの人なんて言ったと思う?他の営業が全部ダメだったリストを全部私にやらせたんですって!はぁ、何それー!?」
それを聞いた河西君が、目の色を変えた。
「マジかよ、それって超すごいことじゃね!?」
「どこがよ!ただの嫌がらせでしょ!?パワハラでしょ!訴えていいでしょこれ!」
「……それってさ、高井さんに期待していたから、そういう難易度高い仕事させたんじゃないの!?」
「そ、そんなわけないじゃん」
「そうかな……あの人、評判聞く限りそんな無駄な事するような人には思えないんだけど……」
「さっきのを見てそれ言える!?」
何で河西君は、それほどまでに、あのクソ上司の肩を持とうとするのだろう。
「……高井さんがそれで良いなら構わないけど……でも、同じ仕事を任されている同僚としては、高井さんがすごく羨ましいよ」
「羨ましい?」
この言葉の意味をどう捕えていいか分からないでいると……
「あの人、河西君に色目使ってる……」
「やだ、加藤さんにもかまわれてるのに、それだけじゃ足りないってこと?」
「あんなどこにでもいる地味な子がどうして……」
出た……。
陰でこそこそ言ってないで、本人に直接言いなさいよ……。
ワークライフバランスが比較的守られる、営業事務の契約社員として働いている女性陣。
彼女達の本業は、もっぱら終業後に行われる合コン、婚活だという噂もある。
仕事の質よりも、流行のメイクやネイルを追いかけている時の方が、よっぽど有能さを発揮することだろう。
そのネイルや、メイクをする時間は一体どこにあるんだよ……。
いっそ分けてくれよ……。
「気にすんな。加藤親衛隊だろ?あれ」
いえ、あなたの親衛隊でもありますけどね。
「でさ、高井さん、さっきの件だけど」
「さっきの件?」
何か話したっけ?
「ほら、一緒に食事に行こうって話したじゃん。この後どう?」
そうだっけ?
でも、乗りかかった船だ。
今日は酒でも入れなきゃやっていけない。
「いいねいいね!他誰誘う?いっそマネージャー以外の営業のメンバー全員に声かけて、ぱーっとやろうよ!」
「いやだからね、そうじゃなくて……」
と河西君が話したところで
「高井さんいらっしゃいます?」
私のチーム……つまり、クソ加藤マネージャーのチームを担当している営業事務、井上智絵里さんが息を切らせて走ってきた。
クソ上司の親衛隊と違って、仕事は真面目で丁寧で早い。
それなのに昇進欲が一切ない。
勿体無いと、別のマネージャーが泣きながら井上さんを説得しようとしたのを1度見かけたことがあった。
問答無用で
「せっかくのお誘いですがお断りします」
と言われたマネージャーの顔は、意を決して告白したのに振られたそれと似ている。
……そのマネージャーは、女性ではあるが。
「は、はい!ここにいます!」
年齢は井上さんの方が年下だが、社歴は上なので、敬語で話すようにしている。
「あ、よかった……いらっしゃったんですね」
「ど、どうしたんですか!?」
「それが、高井さん宛にクレームで……」
「クレーム!?」
クレーム処理自体は、今まで1度もしなかったわけではない。
とはいえ、前職ではせいぜい数ヶ月に1度。
それに、私自身に対するクレームというよりは、サービスに対するクレームばかり。
私は仲介くらいしか対応せず、実際に対応したのは別の部署の人間だった。
なので、いざ私自身にクレームがきた場合の対処法はマニュアルレベルしか知らない。
ど、どうしよう……。
「と、とにかく今、折り返し連絡をすると言って電話切りましたので……急いで対応お願いします」
「分かりました!」
まずは、スピード対応……だっけ。
「どこの企業様ですか!?」
「ぽんぽこ幸せ株式会社です」
ついさっき……口説き落としたあそこかー!
でもどうして……。ちゃんと丁寧に説明したはずなのに。
「何でも、高井さんに騙されて契約をさせられたとかおっしゃってて」
契約どころかまだアポ段階だし!
でもこういう場合どうしたら……。
「と、とにかくすぐ来て対応をお願いします!」
「わっ、分かりました……」
とにかく、やってみるしかない。
「なんか、大変そうだな。手伝えることある?」
河西君が声をかけてくれたが、タイミング悪く河西君の電話が鳴ってしまう。
「やばっ……」
「お客様優先だから、こっちは気にしないで」
私はそう言うと、足早に自分のデスクに戻った。