食人姫と殺人鬼
残された私と柳さんの間には、微妙な空気が流れる。
「…大丈夫?」
柳さんは床に伏したままの私を見るなり、手を伸ばして立ち上がらせてくれた。
「あー、びしょ濡れ。なんであんな意味の無いことするんだろうね」
そう呟きながら、柳さんはハンカチで濡れた身体を拭いてくれようとして、私はすぐに止めた。
「や、柳さん…いいよ、ハンカチが汚れる、から…」
「気にしないで。洗えばいいだけだよ」
…優しいなぁ。
これまで柳さんとはあんまり話したことがなかったから、分からなかったけど、こんなにかっこよくて優しかったなんて。
いつも寡黙でクールな印象があったからどこか冷たい人なのかと勝手に思っていた…でも大違い。