食人姫と殺人鬼



そんなことを思いながら、ボーッと柳さんを見つめていると、目が合って彼女は少し微笑んで、


「…私はいじめてる人って、弱いから、誰かを卑下にしないと強くいられないから、いじめをしているんだと思ってる」


私を優しく拭きながら、そう呟く。


「だから、あなたが弱いわけじゃないよ。むしろ強いよ」


その時の柳さんの顔はよく見えなかったけど。

長い前髪から覗くその瞳は。

どこまでも真っ直ぐで、誰よりも聡明で、強い光が宿っていた。



この瞬間から、柳夕貴という存在は、私の中で憧れと似た特別なものへとなった。



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