食人姫と殺人鬼



「このテーブルの上とか、当時使ってたのがそのまま置かれてるんだよ」

星くんが指さす机には、使いかけのフラスコや液体の入った瓶詰めがそのまま置かれていた。言われてみれば昨日まで使ってましたと言われてもおかしくない配置をしている。

「だから僕もここは触ってないんだ」

「へぇ〜、ちなみにこの屋敷っていつからあるの?」

「僕も詳しくは知らないけど、少なくとも100年前までは実際に使われていたみたい。有名な製薬会社だったみたいで、ここで実際に実験とかしていたんだって」

だから、か。こんなにもテーブルの上に使用感が残っているのは。

「その製薬会社が潰れてからこの屋敷からも人が立ち退いてね。僕の先祖が買い取ったんだ」

「そーなんだ……」


────あれ?

星くんのお気に入りの部屋に連れて行ってくれたのは嬉しいんだけどさ。もしかして解説されるだけで終わり…?

私はもっと星くんのことが知りたいのに。

ここは勇気を出して……!

私は星くんに触れようと1歩近づいた。


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