食人姫と殺人鬼
「あと、俺がこの部屋が好きな理由、もう1つあってね」
「───え?」
星くんの手に触れようとした瞬間、私の視界は90°反転していた。
何が起きたのか理解できずに、床に背中を打ち付け痛みが走る。
「……っ〜!」
確かに今、星くんに足を掛けられ転ばされた。
何で?どうして??と頭の中がぐちゃぐちゃになっていた時、そっと星くんが私の背中に触れ、上半身を起こしてくれた。
背中に触れる星くんの手がやけに冷たく感じて、彼の落とす影は真黒い闇のよう。
私は本能的に危険を感じ、すぐに立ち上がろうとしたが、肩に触れる彼の強い力がそうはさせてくれず。
ただ、冷や汗が顔を伝うのみだった。
「……ほ、星、くん……?」
僅かに動く首を後ろに向け、星くんの顔を見れば、彼はいつもと同じ笑顔を私に向けて。
ゆっくり口を動かした。