放課後、雨が降ったとき
元から全身を濡らしていた彼は今更それを気にする様子もなく、ただただ猫と傘を共有していて、その纏う空気は教室にいる時のそれとは違った。
不良と噂されている彼の普段とは異なる姿。
期待していた展開だとここで私が恋に落ちるはずなんだけど……実際にその場面に遭遇しても全然ときめかないんだなぁ。
なんて、妄想と現実の差に肩を落としていると、
「……何見てんだよ」
「………」
振り向いた彼と、がっつり目が合ってしまった。
……これは、逃げた方がいいの?
不良って暴力的なイメージだし、なによりここでも痛い目に遭うのはお断りだ。
でも、捨て猫に傘を差し出すくらいだから、そこら辺の男子高校生よりは優しさを持ち合わせてるのかもしれない。
でもでも、それは猫限定で人間相手にはフルボッコって可能性もあるよね。
どうしたらいいの?どれが正解?
と、もたもたしている間に彼は猫に傘をプレゼントして、
「おい、行くぞ」
「えっ、どこに……って、なに?!」
大股で近くまで来たかと思うと強引に私の手を引き、どこかへと連れ去ろうとする。
振り払おうにもさすが男の子といったところで、女子の私では到底力が及ばない。