放課後、雨が降ったとき
……これは、たぶんあれだ。
大丈夫とは思えないほどに私がぐしょぐしょに濡れてるってことだ。
あまりにも真剣な顔をするから、一瞬、心でも読まれたのかと思ってしまったけど。
まさか、私の心の内がバレているなんてことはないはず。
だって彼とはこれまでろくに会話もしたことがない。
それとも、雨の中にいたのに。
彼には私の隠しているものが見えてしまったのだろうか?
なにも答えないでいる私の頬に彼の手が添えられたかと思うと、すっと親指で目元をなぞられる。
反射的に目を瞑ってしまって……その瞬間。
じわっと目に溜まっていた水がぽろりと零れ落ちた。
「雨に打たれてたのは、それを隠すためだよな」
「………」
「まぁ、そうしたくなるときもあるよな」
どうして泣いていたことがわかったの、とか。
わかってたならそのままにしてくれてた方が良かったのに、とか。
君もこんなふうに……全身に激しくて重い雨粒を受けて、なにもかもを流したくなるような……そんなときがあるのか、とか。
聞きたいこと、言いたいことが浮かぶけれど、どれも声にならない。
代わりに、少しの間だけ止まっていたはずの涙がまた、とめどなく溢れて頬を伝っていく。
その涙が彼の手も濡らしてしまって。
でも、なんだかそれが嬉しかった。
小学校低学年以来、泣き顔なんて家の人達にも見せていないし、もちろん仲の良かった子も知らない。
それなのに、大して仲良くもない同じクラスの男子にこうして泣いているところを曝け出しているのが不思議で、とても現実とは思えなくなる。
それでも、いつの間にか頬から頭へとうつった手が、ぽんぽんと宥めるように跳ねていて。
その温かな感触がこれは現実なんだと教えてくれた。