放課後、雨が降ったとき
「その辺に生えてる花を見て和やかに笑ったり、捨て犬に傘をやったり……人と違うことしてんのが目についた。綺麗だって思った」
「それを言うなら君もさっき猫に傘をあげてたでしょ」
彼の本心は私の心にふすっと刺さってむず痒くさせる。
照れ隠しに先程まで私が眺めていた光景を口にすると、彼は初めて真顔を崩して可笑しそうに肩を震わせた。
「あれは、お前の真似をしただけ。お前が見つけたらまたああやって雨から守るんだろうなって」
そう明るい声で言って、心臓に悪い笑顔をこっちに向けてくるもんだから、免疫のない私の心は簡単にざわつく。
……不良だなんて誰が言い始めたんだ。
今の彼は不良どころか明るい好青年じゃないか。
不良という単語と合致するのは校則に違反している金色の髪と顔にある傷くらいだ。
……そういえば、彼と私は境遇が似ていると、彼は言っていた。
だとしたら、彼も暴力を振るわれている身なんだろう。
彼も被害者だからこそ、私の傷に気づけたんだ。
……彼がなにかに苦しめられていると言うのなら。
彼が救ってくれたように、私も彼を救いたい。