放課後、雨が降ったとき


「私も、君のことを守りたい」


ぽろっと出てしまった本音は彼の耳にもしっかり届いたようで、彼は驚いて目を見開いた。


その姿もなんだかツボで口元が緩んでしまう。


「君は私を救うって言ってくれたから。……私にとってそれは難しいことかもしれないけど。それでも、私も、君を救いたい。辛いときや苦しいときに、支えたい」


途切れ途切れでも、丁寧に。自分の言葉を紡いでいく。


……残念ながら武術については疎くて役に立てないかもしれない。


だけど、もしも周りから心ない言葉や敵意を向けられたら、そのときは側にいて少しでも気を紛らわせてあげたい。


一緒に笑ってればきっと気分は変えられるから。


だから、隣にいたい。


「……っ!」


彼の手を両手でぎゅっと包み込むと、彼はビクッと肩を跳ね上げた。


それから目をぱちくりとさせる。


「……手の感触がある。夢じゃ、ない」

「当たり前でしょ。それに、先に言ってくれたのは君の方で……だから、その。……ありがとう」


その瞬間、がばっと冷たいものに包まれて体が強ばる。


でも、そのあとじわじわと温かくなっていくのを感じて『あぁ、これは彼の温もりなんだ』って体の力が抜けていった。


そして、


「綺麗なだけじゃなくて、可愛くもあるんだな」


そんなことをぼそっと呟くもんだから、羞恥で顔を隠したくなる。


彼の胸に埋めないわけにはいかない。


ストレートにも程がある。


いちいち私の心臓に悪いんだから……。


まぁ、嬉しくないわけじゃないけどね。


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