6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
甘い重低音が鼓膜を揺らす。
膝から崩れ落ちそうになって、慌てた清水が支えてくれた。

「大丈夫か?」

「……だ、大丈夫」

彼の胸に寄りかかり、そろそろと自分の足で立つ。
どきどきと速い心臓の鼓動が聞こえるが、これは私の?
それとも清水の?

「……あの」

いつまでたっても清水は私を抱き締めたまま腕を緩めてくれない。

「ん?
ああ」

ようやく清水が離れたが、心臓の鼓動はいつまでたっても落ち着かなかった。

「いますぐ返事をくれとは言わない。
でも俺は絶対に、浅井に好きだと言わせてみせる」

清水がそんな気持ちだっただなんて知らなかった。
私のちっぽけなプライドのせいで、私たちは遠回りをしていたんだ。

「あのさ、清水」

顔を見るのは気恥ずかしくてシャツを掴む。

「私も好き」って言えば終わりなのはわかっているが、六年間拗らせた言葉は出てこない。
こんなにするりと言えた清水が羨ましい。

「他の男の写真も撮らないし、もう画像も集めない。
清水だけにする」

「うん、それならいくらでも撮らせてやる」

「それで、その……」

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