6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
後輩のミスをカバーするのは当たり前。
それに彼女はあんなに、恐縮しきっていた。

私のレモン酎ハイが空になり、一次会はお開きになった。
結局、例の昇進した彼――清水(しみず)とはひと言も話せていない。

「カラオケ行く人ー!」

ふたり、手を上げた恵美の側に着く。
隣に立つ清水はどうするんだろうか。
彼が行くなら行ってもいいかな。

「どうする?」

清水の黒縁眼鏡越しに目があい、聞かれて慌てた。

「あ、私はもうちょっと飲みたいかな」

「そうだよな、浅井(あさい)があれくらいで満足するわけがない」

「ちょっとひどっ」

さりげなくカラオケ組から離れた彼と一緒に歩く。

「ここでいいか」

「うん」

バーに行くのかと思ったら、清水が選んだのはイタリアンバルだった。

「腹、減ってるだろ」

「うん、ありがとう」

渡されたメニューを開き、どうしようか悩む。

「清水はどうする?」

「あー、そうだな。
少しくらいなら摘まむ」

「了解。
てか、私が勝手に決めていいの?」

「かまわない」

許可ももらったので、ピザとサラダを頼んだ。
ピザは清水とシェアしよう。

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