Gold Man
「カイル、仕事しなくていいの?」

「しなくていいだろ。だって、何もしなくてもお金が手に入るんだから」

カイルはそう言い、金を売って買った酒をいくつか手にする。ジン、スコッチ、アクアビット、ティフィンーーー棚には貧しかった頃は目にすることしかできなかった酒が揃っている。

「カイル、昼間からお酒なんてやめて!」

カイルの手からセーラが何故か泣き出しそうな顔をして酒を取り上げる。カイルは苛立ち、「何するんだよ!!」と声を荒げた。セーラは肩をびくりと動かしながらも、思いをぶつける。

「カイル、お金持ちになってからどんどん変わって行っちゃったわ。私、貧乏な頃のカイルの方が好きよ。あの頃のカイルは優しくて働き者だった。……どうしてこんなに変わっちゃったの?」

セーラの瞳から涙がこぼれ落ちる。しかし、カイルの胸には先程の言葉も涙も響くことはなかった。貧しかった頃は決して人に向けることがなかった冷たい目を、世界で一番愛おしいはずの人に向けている。
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