Gold Man
「変わったっていいだろ?それにセーラだって、今の方がずっと幸せだろ?ご両親の生活費も出してあげているし、こんなに大きな屋敷に住んで、綺麗なドレスや宝石に囲まれて、家事だって使用人を雇っているからしなくていいし、何が不満なの?どうしてセーラは働くの?お金があれば幸せじゃないか」

お金があるからこそ、今の生活がある。労働に縛られ、時間に縛られ、今日食べるものに苦労していたあの頃とは真逆の生活だ。カイルはそれのどこか不満なのかが理解できず、泣き続けるセーラを見つめる。

「カイル、お金待ちになってから冷たくなった……。前はどんな人にも手を差し伸べて、助けてあげて、本当に優しい人だったのに……」

今は一日中お金が増えていくのを見るばかり、そんなセーラの言葉を無視してカイルは部屋を出る。今日は金の実がなる日なのだ。

三重にかけられた鍵を外し、頑丈な分厚い扉を開ける。部屋は、カイルの財産が詰め込まれた宝部屋だ。その部屋の中心に、札束に囲まれて金のなる木が置かれている。
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