Gold Man
老人にそう言われ、カイルとセーラは頰を赤く染める。そして互いにゆっくりと顔を見合わせた。

人にすぐ手を差し伸べる二人は、理想のカップルとしてこの町で有名である。結婚をすれば理想の夫婦と呼ばれるのだろう。

(セーラと結婚したいけど……)

カイルは老人と楽しげに話すセーラを見つめ、心の中でため息をついた。交際を始めてもう十年近く。そろそろ結婚をしたいのだが、カイルはあることでなかなかプロポーズできずにいた。

ツギハギだらけの服から想像がつくように、彼の家は裕福ではない。むしろ貧しいくらいだ。そんな貧しい家の自分の家に嫁いでも、セーラを幸せにしてあげられる自信がない。

(それに何より、結婚式を挙げさせてあげられない……)

幼なじみという関係だったため、セーラが結婚式に憧れていることを知っている。純白のドレス、厳かな教会、祝福の眼差し、一生に一度しかないこのイベントに憧れる女性は彼女だけではないだろう。しかし、カイルには結婚式を挙げられるだけのお金すらないのだ。
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