Gold Man
（プロポーズしたいんだけどな……）

今の持っている貯金全てを出しても、結婚指輪を買うことすらできない。ドレスも指輪もないなんて、セーラをガッカリさせてしまう。

カイルは、ため息をつきたいのをただ堪えるしかなかった。



それから数日後、カイルは市場へ買い物に出かけていた。シングルマザーの人に頼まれ、買い物に来ているのだ。

「パンは買ったし、トマトとトウモロコシも買った。あとはりんごだね」

新鮮な野菜や果物が生まれている八百屋に向かう。午後の市場は買い物客で賑わっているため、人とぶつからないようにするのが大変だ。

「すみません、りんごを一つとあとバナナを一房ください」

シングルマザーから、「カイルも好きな果物を買いなさい」と言われていたのでカイルは自分と家族の分としてバナナを買うことにした。

「はい、りんごとバナナだよ」

「ありがとうございます」

りんごとバナナを受け取った後、寄り道をすることなくカイルは帰っていく。人混みをすり抜け、市場の入り口まで来た時、「お兄さん」としゃがれた声で話しかけられた。
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