イケメン彼氏とはじめる相思相愛

✴︎


2年前。
事務処理で初歩的なミスがあった。
中堅社員が新規顧客の初会議に行く時に持って行く資料を、総務部の社員が間違えたのだ。

入社したての絵里奈は、その場にいたのだがどうして良いか分からなかった。

その資料はギリギリ直前に変更箇所があったらしい。
慌てて直したが、その数字を間違えていた上に、さらに横に置いていた全然違う顧客用の資料と混ぜてしまったのだ。

間違えたのは50代の総務の女性だった。
仕事にも慣れている人なのに、ちょうど家族の事情で朝からバタバタが続いていたらしい。

それでも、いつもなら必ず確認が二重や三重にもなされるはずだった。

ところが、確認する上役が出社直前に骨折で欠勤、会議に出る本人も電車が事故で遅れ会社にも寄れず慌ただしく直で現地に向かうことになった。

その連絡も入って、さらにややこしくなり、手の空いていた内容を知らない社員が書類だけ急いで届けに向かった⋯⋯ 。

いろいろなことが偶然重なってしまってミスが起こった。
急いで持ち出した後、間違ったごちゃ混ぜの資料だと分かったのだ。

職場が間に合わないよ、と嫌な感じになり、どうにも出来ないと皆が立ち止まっていた時、騒ぎで総務の部屋に来ていた一颯が、

『会社全体の責任だな』

って言った。
一瞬で誰もがそう思った。

『誰がとかそんな事は後でいい、とにかく修正していこう』

と言った時には、もう自ら書類の手直しを始めていた。
手分けして、すぐ資料を整理し修正し、電話して、自転車の社員を呼んで⋯⋯ 。

手が空いていたのは、ミスした本人と絵里奈と一颯。
絵里奈は入社したてだったが、一颯の指示に従って必死で準備した。

出来上がりは社内一走るのが早い人が自転車で届け、何とかギリギリで間に合ったのだった。

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