イケメン彼氏とはじめる相思相愛

会社に入るため、エントランスから絵里奈は彼の前をうつむいて通り過ぎた。

『会社では秘密だから、』って昨日約束した。

普通に、何でもなく、
ギクシャク、
手足をどう動かしただろうか。
普通に出来ただろうか。

(気がついたよね、私に)

彼が待っているのは、私=彼女⋯⋯ ではなく、同じ部の男性社員だ。
彼は今日は朝から担当先のオフィスで会議の予定だ。

いいかな、まだ始業時間じゃないし、 前を通り過ぎたし、迷いながら昨日教えてもらった彼の携帯に、

[おはようございます。前を通り過ぎちゃいました]

って送ったら、そっけなく、

[本当だね]

って返事。
慌てて、

[お仕事頑張って下さいね]

っと、送信。終了!

あー、やっぱりこんな浮かれて朝から送ったらダメみたいだ。落ち着いて、私!

人にバレないあたりまでギリギリ我慢してから、エレベーターの曲がり角であわててクルッとエントランスを振り返った。

遠くにまだ立っている背の高い彼の姿が見えた。
大きな手で携帯を持ち、画面を見て、慣れたように親指で画面に触る。

(その画面、私だよね⋯⋯ )

と思うと興奮が体を駆け巡る。

(嘘みたいだ、長い妄想してるのかな)

なんて。
いやいや、今、返信のきた相手の名前、[城戸一颯]!

まさかのあの人が⋯⋯ 。

信じられないけど、昨日から絵里奈の彼氏で⋯⋯ 、


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