イケメン彼氏とはじめる相思相愛

真緒は、一カ月前から、一颯と同期の轟 裕樹(とどろき ゆうき)と付き合い始めていた。

エリートの総合職社員と付き合うのは、なかなかの難関だ。
受付嬢をはじめとするサービス部門の美人さん達も、事務職の女性も、また外部からも、彼らは常に彼氏としても結婚相手としても狙われている。

轟裕樹は、どこかの王子様のような雰囲気の柔らかい空気を纏う美形で、同期の一颯と2人高身長の超イケメン組で有名だ。ものすごく競争率が高かった。


「まさか本当に、うまくいってよかった⋯⋯ 」


真緒は制服に着替える途中で、携帯の裕樹の写真を眺めて、熱いため息をついた。


「はぁ、素敵だな、裕樹さん⋯⋯」

「最後まで着替えちゃってよ、真緒! 」


明るくさっぱりして自信がありそうな真緒はかなり美人で目立つ。活発で社交的に見えるが、実は地味な生活が一番落ち着くというタイプ。
絵里奈とは最初から妙にウマがあった。
正義感が強く真面目な性格は、絵里奈と価値観も似ている。

今更ながら付き合っているイケメン彼氏を見て、その奇跡にため息をつく真緒。
彼女の気持ちはよくわかる。

絵里奈だって一颯が彼氏だなんて信じられない気持ちだ。妄想じゃないかと思うぐらい。
そして頭の中は一颯でいっぱいだ。

絵里奈も携帯の一颯とのトーク画面を見て、熱いため息をついた。
付き合えた⋯⋯ でも⋯⋯ 。

一颯の気持ちは⋯⋯ 。

絵里奈の自分自身の気持ちとはズレがあるように思う。何となく、タイミングが合っただけ⋯⋯ みたいな。

舞い上がっていた気持ちが少しトクンと痛む。

絵里奈は、つい一カ月ほど前に偶然立ち聞きしてしまった、一颯の言葉を思った。

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