イケメン彼氏とはじめる相思相愛
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真緒が裕樹と付き合いはじめる少し前⋯⋯ 。
真緒が彼と2人で食事に行けるか聞こうとして、会社の会議室で立ち聞きしてしまったことが頭をよぎる。
轟裕樹は物腰は柔らかいが、いかにもやり手と言ったピリッとしたものを時折感じさせる期待のイケメン若手だ。
その時も柔らかい茶色味の髪が、動くとサラリと揺れていた。すっきりとした甘いマスクはどこかの王子のような風情。
モテまくる彼を真緒は必死で追っていた。
あと少し、もう少しで告白する⋯⋯ 今日こそと、2人で裕樹が一人になるチャンスを伺っていた。
実際、総合職の彼らは本当に忙しくて、同じ会社なのに、なかなか会う機会がない。
会社で見かけたと思ったら、もう顧客先に行ってしまっているし、仕事の終わる時間も日によって違う。
しかもほぼ毎日のように会食予定が入っている。
ぼんやりしていたら、1ヶ月ぐらい姿が見れない日が続く。
一颯も同じで、よほどかかりきりで様子を伺っていないと、チラッと見る事も出来ないぐらいだ。
真緒はその隙をついて、何度も偶然を装って話しかけ、ついに食事の約束をしたのに、その肝心の日取りのために、こうしてまたこっそり様子を伺っていたのだ。
裕樹が一人で空いている会議室に入ったので、追ってきたら中に誰かいる⋯⋯ 。
この声、城戸一颯さん⋯⋯ 。
偶然、裕樹が一颯と話しはじめたのが聞こえたのだ。
2人で飛び上がりそうになった。
「あの子が⋯⋯ 」
「真緒さん? 」
立ち聞きしていた真緒が、大きく目を見開いて絵里奈を見る。
(真緒の話! )2人でうなづいてごくっと息を呑んだ。
「だね」
「ふーん。一緒にいる花岡さんは⋯⋯ 」
(私だ! )
はい、花岡絵里奈です!
真緒につきそって、一緒に聞き耳を立てていた絵里奈の耳に、一颯が絵里奈の名前を出している⋯⋯ まさか、一颯の話に自分が出てくるとは思いもしなかった!
黙って2人で目を合わせる
「オレにはちょっと、、」
と一颯が行った時、裕樹の電話が鳴り、そのまま続きが聞けなかった。
あの時、ヒヤッとした。
『オレにはちょっと、』の先、知りたくて知りたくない、まさか合わないって言いたかったとか?
ズキっと心がして、なんか込み上げてきて、泣きそうで、胸がいっぱいになった。
裕樹と一颯がかなり仲の良い友達で、『あの子』とか『真緒さん』とか『花岡さん』とか、名前を出して話すぐらいなんだなって知った。
その後『あの子』の方、真緒は告白して、裕樹と付き合った。
絵里奈はでも、名前が彼の口から出るほどなんだって、意識されてるって事じゃないか、と前向きに自分で自分をはげましたのだ。
まだ、頑張れる。
まだ、彼を好きでいる。
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そうして、昨夜起こったこと⋯⋯ 。