LOVEDANGER~元ヤン御曹司と悪女OLの身籠り溺愛婚~
「次は、お前か?立て」


今までとは違い、篤さんはその酒井を睨んでいる。


この人が腹立つ気持ちは、私もよく分かる。


「あ、はい。すみません…」


酒井は頭を下げながら、立ち上がる。


「お前はなんで梢に振られた?」


「デートの時梢にキスしてホテルに連れ込もうとしたら、足踏まれて逃げられて。
そっから、LINEもブロックされて連絡も取れなくなって。
今思い出しても、すげぇ腹立つ」


「…気持ち的には、お前の事ぶちのめしてやりたいが、
まあ、いい。
さっさと、俺を殴れ」


「あ、はい…。
でも、いいんですか?
俺もけっこう昔悪さしてて、
上級生相手に喧嘩とかしょっちゅうで」


「んな話どうでもいいから、さっさとしろ!」


篤さんは、その酒井の襟首を両手で掴み締め上げている。


けっこうキレているなと、思う。


篤さんは、自分を抑えるように、
溜め息を吐くと、
その手を離した。


酒井は、それでは、と言い。

そんな篤さんを殴った。


それなりに悪さしてたのは本当なのか、
一番、その音が大きく響いた。


篤さんの左頬がさらに腫れ出したのもそうだけど、
唇が切れて血が滲んでいる。


「あの車、お前のなんだよな?
俺がぶつけたやつ」


「あ、はい」


「事故にしたら面倒だから、どっか適当にぶつけた事にしとけ。
その修理代くらい出す」


そう言って、篤さんは自身の名刺を取り出し、
酒井に渡していた。


「分かりました…」


その酒井に渡した名刺には、篤さんの勤め先であるベリトイのもので。


そうやって、こんな人に本名や身分を明かしていいのか?と思うけど。


それでさらに何か悪い事を企む程、
この酒井も馬鹿ではないだろう。


篤さんを見守るように取り囲んでいる、ガラの悪い人の集団を見て思う。

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