LOVEDANGER~元ヤン御曹司と悪女OLの身籠り溺愛婚~
篤さんの車は、マンションの地下の駐車場にあり。


黒い車体の車で、あまり車に詳しくない私でも、その車の車種は知っていた。


ボルボ。


私を助手席に乗せ、


「お前、家は昔から変わってないか?」


そう訊かれた。



「はい。母親が再婚してからも、同じ家です」


わざわざ、そこまで言わなくてもいい事迄、口にしてしまったけど。



「そうか」



篤さんは、特に気にしていなかった。



篤さんは迷わず、私の家の方へと車を走らせる。


道がすいていて、30分も掛からないうちに、家へと着いた。


「なんか、懐かしいな」


私の、そのなんの変哲もない二階建ての一軒家を見ながら、篤さんは感慨深そうに口にした。



「寄って行きます?」


その私の言葉に、ちょっと驚いたように私を見ていて。



「冗談です」


なんで、私もそんな事を口にしたのだろう。


まだ家に兄の瑛太が居るのならともかく。


私が家に篤さんを連れて行くなんて、
彼氏でもないのに、おかしい。



ただ、懐かしいと思ったのは、篤さんだけではなくて、私もなのかもしれない。


昔、篤さんがよく私の家に来ていた事が。



「篤さん、さよなら」


最後だと思い、私は自分から篤さんにキスをした。



それは、一瞬触れただけ。



「ああ」


そう言った篤さんの声を聞きながら、
私は車から降りた。



外はまだ少しだけ雨が降っていて、

外構の門を開き急いで家へと歩く。



玄関の鍵を開けようとする前に、
篤さんの車の方を見るが、
それはちょうど走り去る所で。


そのあっさりとした感じに、
私だけが後ろ髪引かれるような気持ちで、立ちすくんでしまう。


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