LOVEDANGER~元ヤン御曹司と悪女OLの身籠り溺愛婚~
「また"極道"カツカレーだね」


ミヤコは声を潜めそう言い、テーブルを一つ挟んでの右隣に居る、川邊篤をチラリと見ている。


その"極道"は、その彼のこの会社での、影で呼ばれているあだ名。


実際、極道ではなかったのだろうけど、
彼の左肩に派手なタトゥーが入っているとかで、
その辺りから広がった噂というかあだ名というか。


「けど、中卒なのに、こんな大会社の次期社長だもんね。
いや、会長か」


これも噂だけど、彼は中卒で。


21歳の時、大検を受けて大学受験をしたとか。


だから、正確には中卒ではなくて、大卒なのだけども。


「けど、いい男なんだけどね…」


ミヤコは残念そうに、極道と呼んでいる彼を見て、ため息をついている。



川邊篤、彼は目が細いからそれが怖い印象を与えるのだけど、
その目が色っぽく。


全体的な顔立ちも整っていると思う。


背は高くはないけど、足は長く。


スーツを着ていてもそれなりに筋肉が付いているのも分かる。


男性の趣味は人それぞれだけど、
世の女性から見て、
抱かれたい男に分類されるであろう彼。


「いい男だよね」


私はうっとりと、そんな彼を見てしまう。


残念、だとため息を付くミヤコとは違い。


ミヤコが残念だと思うのは、
尾びれが付いた彼の悪いその噂と、次期取締役の声があるそんな彼に、

色々な意味で近寄れない、からだろう。


この会社で彼をいいと思う女性は沢山居ると思うけど、
みんな色々と思う所があって近付かない。


多分、近寄っていない、と私が見張って…いや、見ている限りはいないと思う。


私は、川邊篤に恋心のような憧れがある。


それは、目の前の親友のようなミヤコにも、秘めている思い。


本当だったら、こんな会社だって辞めてしまっても…と思うけど、
辞めなかったのは、入社してすぐに、彼をこの会社で見たから。

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