LOVEDANGER~元ヤン御曹司と悪女OLの身籠り溺愛婚~

「あれ、梢?」


母親はちょうど寝ようとしていたからか、
テレビを消してリビングから出ようとしていた。


「ちょっと、帰って来た…」


「なんで?」


「ほら、翼に会いたくて」


翼に会いたかったのは本当だけど、
それは、嘘。

なんとなく、篤さんと喧嘩したと言えなくて。


「そう。
布団、シーツとか外してクローゼットに入れているから」


「分かった」


結局、篤さんのマンションにベッドは持って行ったけど、
布団は持って行かず、新しいのを用意して貰った。


「この子、連れて行ってあげたら?」


その母親の視線は、私の腕の中の翼に向いている。


「でも…」


翼を貰って来たのは私だけど、
この子はもうこの家の猫だから。


「梢が出て行ってから、寂しいのかエサもあまり食べなくて。
それに、毎日夜になると、あなたの帰り待っているのか、ずっと玄関の方に居たり、見てたりで」



私は腕の中の翼に目を向けるが、
自分の事を言われているのを分からないのか、キョトンと私を見返して来る。


「篤さんに相談してみる」


そう言ったけど、この先私と篤さんはどうなるのだろうか?


今までの私の経験上、こんな風に付き合っている男性と喧嘩したら、
そのまま別れている。


そこから仲直りなんて、ない。


喧嘩の後、向こうが謝って来たパターンも何度かあるけど、
私は絶対に許さなかったし。


私と篤さんは結婚していて、
おまけに私は妊娠しているけど…。


ただ、今回は私の方が惚れているパターンだから、
私から謝る事になるのだろう。


許してくれないかも。


離婚、そんな二文字が頭を掠めた。

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