君と旅の途中
9、リスタート
「……よし」
俺は鏡の前で制服のネクタイを締め、強張った自分の顔を見つめた。
そこに移ったのは見慣れた制服姿と、まだ体に馴染んでいない制服
その差に少しの違和感を感じる。
……制服ってこんなに硬かったんだな。
そう実感して、ふっと息を吐いた。
本当に、過去に来たんだ。
昨日の出来事は夢で、今日起きた時には現実に戻っているのではないかという、若干の不安は杞憂だったようだ。
そこでふと腕時計に目を落とし、登校時間が追ってきていることに気が付く。
慌てて用意を再開し、玄関のドアを開く。
「行ってきます!」
返事を待たずに飛び出すと。春らしい柔らかな朝日が身を包んだ。
どこからか漂う花を香りが鼻腔を刺激した。
あぁ、春だ。
当たり前の事を思ってしまって、つい苦笑してしまう。
おいおい、時差ぼけでも起こってんのかよ。いつにもまして脳が馬鹿になっている。
そう、自分で自分にツッコミを入れた。
その時。