君と旅の途中
「俺は反抗期じゃねえし。はいはい、おいしい、おいしい。料理上手のお母様」
「ちょっと、それ本気で言ってるの?」
「逆に本気だと思いました?」
そんなやり取りをして母親に小突つかれていると、穂香さんがふふっと楽しそうに笑った。
「よかったわね、穂香。燈子ちゃん、今日は本当にありがとう。流石お料理上手ね」
にこにこと穏やかな笑顔の穂香さんに、母さんは嬉しそうに頬を緩ませ、手を当てた。
「あらあらあら~。穂香ったらほめ上手ね~。そういうところが穂希ちゃんと似てるわね」
いやいやいや、お母様。どう考えてもお世辞でしょうよ。
出れっと目じりを下げた母親を無視、穂希の皿に大盛りの食べ物を盛る。
「ほら、母さんの話は長いからな。先に食べてようぜ」
「あははっ。そうだね、料理が冷めちゃう」
穂希はお箸でハンバーグを大きめに切り分け、口に運ぶ。
「ん~っ。美味しい~!」
頬を食べ物で膨らませ幸せそうに破顔する穂希に、俺はほっと息をついて、続いて料理を口に運んだ。
楽しんでくれているみたいでよかった。
俺の家では何の心配も忘れて、気楽に過ごしてくれると嬉しいな。