君と旅の途中
すると穂希も同じような格好になって、ふわっと柔らかく脱力した笑みをこちらに向けた。
「やっぱり都生といると楽しいなぁ」
「あ、そう」
「うん、すごく楽なんだよ」
「……」
気の抜けた笑みに、ドキリと心臓がなってゆるゆると穂希から視線を外し、天井を見上げた。
意識なんて、していない。
……ただ。
自分の家にいるということで俺も気が抜けていて、気持ちのコントロールができていないだけ。
俺はふっと息を吐くと、穂希の頭をポンポンと軽く撫でた。
「それは良かった。俺の事はお兄様と呼ぶがよいぞ?」
そう少しふざけると、穂希はぴきとこめかみに血管を浮かばせて、俺の手を払いのける。
「やめてくださるお兄様⁉ 私は子供ではないです事お分かりで⁉」
「口調やば」
そしてちゃっかりとお兄様呼びかよ。
俺がよしよしとその頭を撫でると、穂希は嬉しそうに俺の腕に抱き着いて、猫のように頬をこすりつけた。