君と旅の途中
「と、都生……急にどうしたの?」
穂希は動揺を隠すように笑って、俺から視線を外した。
「自殺ってこと? そんなわけ、ないじゃん。馬鹿じゃないんだからさ」
「……そっか」
「そうそう。ミクルちゃんの言ってたこと気にしてるの? 都生は心配しすぎだって。将来禿げるよ?」
「……」
アハハっと不自然なほど明るい笑みを浮かべ、頭の後ろをかく穂希に、俺も穂希から視線を外す。
……結局、穂希は何も言ってくれないのか。
明るい笑みだったけど、俺は一瞬瞳が揺れたことに気が付いてしまって。
俺は自分の無力さに、ぐっと拳を握った。
なんで、何も言ってくれないんだよ。穂希……。
苛立ちが心を満たして、俺は眉間に皺を寄せてしまう。
でも、俺に怒る資格なんてなくて。
俺はただの『幼馴染』なんだから。
穂希の事情に首を突っ込んでいいわけがないし。
言いたくないことを言うように強制するつもりもない。