君と旅の途中
温かいその手の感覚に、俺は声を引き絞る。
「穂希が……崖から、飛び降りて……っ」
「……え?」
「穂希、自殺したのかもしれない。どうしよう……穂香さん……っ。お、俺……」
「穂希、が?」
穂香さんの顔が一気に青ざめて、あわあわとポケットから携帯を取り出し、警察へと電話を掛ける。
携帯電話を耳に押し付けつつ、穂香さんはこちらに視線を向ける。
「ありがとう、都生君。知らせてくれて。君はもう帰りなさい」
「っでも」
「大丈夫、落ち着いて。穂希のことなら心配ないから」
そう諭されて、俺は何も言い出せなくて俯く。
小さく頷いて、歩き出した。
そうだ。落ち着け。
俺が動揺してどうする。
どれだけ穂希のことを心配していても、心配だけじゃ何にもならない。
俺は大人じゃないのだから。