君と旅の途中
ここは穂希のために何もしてやれない。
……子供って、不自由だ。
言いようもない無気力感が襲ってきて、俺はぐっと奥歯を噛み締めた。
それから数時間後に穂香さんから電話がかかってきた。
『都生君、あのね……』
穂香さんが遠慮がちに切り出した話の内容に、俺は。
『あのね……穂希の遺体が、崖の下で見つかったって』
俺は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
穂香さんがまだ何か話ていたようだったけど、何も耳に残らなくて、すべてが通り過ぎて行って。
穂希が、死んだ。
その言葉だけで俺の意識を飛ばすには十分すぎるほどだった。
頭の中は熱くなっていて何も考えられないのに、指先はどうしようもなく冷たい。
……何も言えずに、ただ手を握り込んだ。