君と旅の途中
太陽の光を反射して艶めく黒髪も、丸くて愛らしい瞳も。
頬を薄く染めて呟く柔らかな声も。
『都生』
そう俺を呼んで、俺だけに向けるあの気の緩んだ笑みさえも。
全部、全部。
……忘れてしまうんだろうか。
そこまで考えて、自分の馬鹿気た思考回路にふっと笑いだしてしまう。
忘れてしまうんだろうか?……忘れてしまうに決まっているだろう。
忘れたいことはすぐに忘れて、忘れたくないことは忘れないでいるなんて。
人間の脳みそはそんなに都合よくできていない。
たかが数年一緒にいたからといって、穂希のことを一生忘れないでいるなんて、ありえないのだから。
幼馴染という肩書だって、穂希がなくなったことで、関係がなくなった。
俺はもう、穂希の幼馴染という存在でなくていいんだと。
そう割り切るしかない。
……そう、頭では理解している。