君と旅の途中
「お前ってさ~。本当に可哀そうだよな。なっ、高田悠氏君?」
「……茶化すな」
不意に高田の名前が耳に入ってきて、ピクリと動きを止めた。
高田が可哀そう?……何の話してるんだ?
高田ともう一人、おそらく高田のクラスメイトらしき男が空き教室で密談をしていて、俺は悪いことだとしりつつも、聞き耳を立ててしまう。
「俺の何が可哀そうだって? 言ってみろよ」
「いや~だってさ。お前の彼女……穂希ちゃん、だっけ? 死んだらしいじゃん」
「……」
穂希?
唐突に幼馴染の名前が聞こえて、大げさに顔を上げた。
ちょうど高田はうつむいていて、高田の表情を読み取ることはできない。
だけど、高田は長い間何も言わなくて。
少しでも穂希が死んだことにショックを受けていたのかと思って。
俺が高田に対して抱いていた不信感なんて気のせいで、高田は本当に穂希の事が好きで、悲しんでくれるんじゃないかって。
そんな期待を覚えた、瞬間。