きらめきを抱えて、口にして。
 正直、ちょっとよく分からなかった。

 確かに、顔もかっこいい……かもしれない。でも、入学して2日目でそんなに話題のある人たちとこんな形で知り合ってしまったのは、自分ではない他の誰かの話のように思えた。私の話なんだけど。

 舞衣ちゃんが、ガンガンと私の肩を力強く揺さぶる。視界が揺れる。




「朝比奈くんと、遠山くんといえば! 朝の朝比奈くん、(よい)の遠山くん! 海の幸、山の幸! とにかく対比した2つ名があるほど、有名で人気な2人なの! あの2人がこの高校を志望してるって知ってここを志望校にした人もいるほど! すごい2人なの!」

「ぐえっ、舞衣ちゃっ、ぎもぢわるい」

「あっ、ごめん」




 舞衣ちゃんは、パッと私の肩から手を離す。おにぎり出そうだった……危ない。

 私は、大きく息を吸い、ふぅ……とゆっくり息を吐いた。

 落ち着いたところで、私のターン。




「2人のこと知らなかったけど、まさかそんな人たちだったとは思わなかったよ。というか、海の幸と山の幸ってさすがにどうなの? 名付け親の顔が見てみたいくらい」

「誰なんだろうね。2人とも隣の市の中学出身って話だから、同じ中学の人なら知ってるかもね」

「でも、そんなに人気なんだ……」

「アイドルのような見た目だからね。そんな人が近くにいたら、まあ(あが)(たてまつ)るよね」

「舞衣ちゃん怖い……」

「私じゃなくて、一般的な女子高生のことだよ。2人の他にも、何人か有名なイケメンが1年にいるんだよね。結詩は知らないだろうけど」

「おっしゃる通りです……そういう情報ってみんなどこで手に入れてるの?」

「うーん、なんていうんだろ。人の口から発せられた言葉って、思ったよりも多くの人に広まってるよね〜って話だよ」

「ほう……? そうなんだ」

「そう、そういうものなの」




 やっぱりよく分からないな。

 イケメンって、存在するだけでこんなに噂になるんだ。ここまで来ると芸能人のような扱いだよ。いや、少女漫画の中の住人なのかも。




「そういえば、結詩はクラスで友達できた?」




 それは、稲妻のようだった。

 舞衣ちゃんの言葉は、ロイヤルストレートフラッシュ。見事に私の心に、傷跡を残したのだった。





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