薄氷
*

日が流れるままに、陽澄は十七歳から十八歳になり、やがて年があらたまった。

一月の半ばから二月の頭のどこかのある日、洸暉とバイクで出かけた。
なぜそこまで具体的に絞れるのかというと、大学入学共通テストが終わり、結果待ちの期間だったからだ。
自己採点で、ほぼ第一志望の大学への合格が確定していたから、解放感と結果の待ち遠しさが入り混じる。そんな時期だった。

彼がガレージに足を向けたので、いつものツーリングのつもりでヘルメットを受け取る。

「ちょっと遠出しよう」と洸暉が告げた。

また映画だろうか、とちらと頭をよぎり、すぐにそれはないと思い直す。
あの映画館はとうに廃業したはずだ。
「どこに行くの?」

どこでもいい、と返された。
「どっか遠くに」

思えば彼にしては陳腐な、Jポップの歌詞みたいな台詞だった。

冬のバイクは、正直あまり好きじゃなかった。単純に寒いからだ。
真正面から風を受ける洸暉はもっと寒いはずなのに、それでもバイクを走らせたいと思うものなのか。

まあいいか、だいたいにおいてそうであるように、受け入れるしかない。
それに、と思う。こうして彼と過ごす日々も、あとわずかだ。
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