薄氷
よく晴れて、キンと空気が冷えた日だった。
コートを着ていても、走り出してほどなく、冷気が微小の針のように布地を貫いて肌を刺してくる。
なるべくしっかり彼に身を寄せる。かじかんだ手が滑って、バイクから投げ出されでもしたら元も子もない。
二人を乗せたバイクは次第に町から外れて、車の流れも途切れがちな県道を走ってゆく。
どっか遠く、と言っていたけど、どこまで行くんだろう———
わけもなく不安がわいてきたところで、ようやく彼がバイクを停止させた。
このあたりで引き返すのかとも思ったが、洸暉がバイクをおりたので陽澄も倣う。
といっても目的地らしきものは、なにもない。ただの道の途中だ。
左手はコンクリートで固められた傾斜地、右手には錆びたフェンスが長く続いている。
フェンスの向こう側は…なんだろう、なにかの施設だろうか。視界は植え込みにさえぎられている。
「ここって…なにかあるの?」
フェンスの奥に視線を投げながら聞いてみる。
「閉鎖したゴルフ場」
へえ、と相槌を打つ。ほかにどう答えればいい?
コートを着ていても、走り出してほどなく、冷気が微小の針のように布地を貫いて肌を刺してくる。
なるべくしっかり彼に身を寄せる。かじかんだ手が滑って、バイクから投げ出されでもしたら元も子もない。
二人を乗せたバイクは次第に町から外れて、車の流れも途切れがちな県道を走ってゆく。
どっか遠く、と言っていたけど、どこまで行くんだろう———
わけもなく不安がわいてきたところで、ようやく彼がバイクを停止させた。
このあたりで引き返すのかとも思ったが、洸暉がバイクをおりたので陽澄も倣う。
といっても目的地らしきものは、なにもない。ただの道の途中だ。
左手はコンクリートで固められた傾斜地、右手には錆びたフェンスが長く続いている。
フェンスの向こう側は…なんだろう、なにかの施設だろうか。視界は植え込みにさえぎられている。
「ここって…なにかあるの?」
フェンスの奥に視線を投げながら聞いてみる。
「閉鎖したゴルフ場」
へえ、と相槌を打つ。ほかにどう答えればいい?