薄氷
第六章/榕樹
*
搬送されてくるストレッチャーの音が、清潔区域に響いてくる。
その車輪の音で、速度、すなわち患者の緊急度を推し量る。
高く鋭い回転音。
車にはねられた男性という一報が入っているが、かなりの重傷なのだろう。
手術室に運ばれてきた完全に脱力した体を、全員で慎重にかつ手早く手術台へと移動させた。
全身血まみれで、手足はありえない方向に曲がり、口や鼻から血が流れている。
車に衝突されたことによる全身打撲だ。
外傷以上に、この場合、脳と内蔵の損傷度合いが生死を分ける。
衣服をハサミで裂き、助手がすばやく体に血圧計や心電図の電極を付けてゆく。
合間に執刀医の竹原が手背静脈に点滴針を刺し、点滴ルートを確保していた。
「血圧61の30、脈拍135、ショック状態です!」
麻酔医が顔を歪めながら声を張り上げる。
「まずは開腹して、出血を止める」
帽子とマスクの間から、竹原が険しい表情で告げる。
搬送されてくるストレッチャーの音が、清潔区域に響いてくる。
その車輪の音で、速度、すなわち患者の緊急度を推し量る。
高く鋭い回転音。
車にはねられた男性という一報が入っているが、かなりの重傷なのだろう。
手術室に運ばれてきた完全に脱力した体を、全員で慎重にかつ手早く手術台へと移動させた。
全身血まみれで、手足はありえない方向に曲がり、口や鼻から血が流れている。
車に衝突されたことによる全身打撲だ。
外傷以上に、この場合、脳と内蔵の損傷度合いが生死を分ける。
衣服をハサミで裂き、助手がすばやく体に血圧計や心電図の電極を付けてゆく。
合間に執刀医の竹原が手背静脈に点滴針を刺し、点滴ルートを確保していた。
「血圧61の30、脈拍135、ショック状態です!」
麻酔医が顔を歪めながら声を張り上げる。
「まずは開腹して、出血を止める」
帽子とマスクの間から、竹原が険しい表情で告げる。