薄氷
高校二年生ともなれば、家庭の経済事情くらいは感じとれる。

父親が経営していた写真製版会社が、押し寄せるデジタル化の波に抗いながら、ついに飲み込まれてしまったのは数ヶ月前のことだ。

父親の自己破産、債務整理、両親の離婚、変わる苗字、引越し、転校…自分の身に降りかかってきたもろもろを、受け入れるしかなかった。ただの高校生になにができる?

現実の厳しさと容赦なさをたっぷりと味わい、挫折というやつを経験し、それでも新しい環境になんとかなじもうと精一杯の今日この頃だ。

まずは…編入した学校のクラスで、どの女子グループに入るか、入れそうかが目下の最重要課題だ。
転校生という特別枠の期限が切れる前に、どこかのグループに入れてもらわなければ。
一緒にお弁当を食べたり、新しい学校のもろもろを教えてもらう存在がいないと、この先やっていけない。

スクールカーストという言葉を使うと、前の学校ではけっこう上位にいられた。
私立のおっとりとした女子校で思い煩うことなく、のんびり学校生活を送っていたのだ。おしゃれや流行りに敏感なほうだったし、それを楽しむ経済的・精神的余裕もあった。

今は…高望みをしてはいけない。
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