薄氷
やっぱり田舎は不便だ。越してきてからこのかた数えきれないくらい感じながら、口にしてはいけないことが、どうしても頭をよぎる。

とはいえ放課後のおしゃべりも首尾は上々(と自分では思えた)。坂下梢と、その友達の原岡奈美という子と、三人で机を囲んでおしゃべりして、それなりに盛り上がった。明日一緒にお弁当を食べようという誘いも受けた。

所属グループ獲得まで、あと一歩まで迫った。
高揚感と秘かな安堵にひたっているとき———彼に出会った。正確には、彼を見た。

転校してきてちょっとばかり驚いたのが、この学校の教室には廊下に面した壁にも窓があることだった。
曇りガラスなので、閉じているとはっきり向こうが見えるわけではないが。授業中は閉めているけど、休み時間や放課後は解放されていたりする。

これは田舎の学校の特徴なのか、それとも自分が知らないだけで、全国の学校ではよくある構造なのだろうか。
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