薄氷
ほどなく洸暉がペンを置くと、両手を後ろについて首をのばすように背を反らせた。
腹が減ってないのに無理に食ってもな、と視線を斜め上に向けたまま口にする。
今日はこれでお開きなら、こちらとしても異論はない。結局のところ彼次第だ。
と、なにを思うのか、洸暉が再びペンをとった。
ノートの余白になにごとか書きつける。
z = a + bi
なにこれ、と素直に問うた。
俺と———、と数式に目を落としたまま彼が答える。「ヒズミ」と。
疑問符が蜂のように脳内をブンブン飛び回る。
この未知の数式と自分と洸暉になんの関係があるんだ?
パタンと疑問を封じるように、彼がノートを閉じた。
視線をこちらによこして「送ってく」と短く告げる。不思議と静かな目をしていた。
腹が減ってないのに無理に食ってもな、と視線を斜め上に向けたまま口にする。
今日はこれでお開きなら、こちらとしても異論はない。結局のところ彼次第だ。
と、なにを思うのか、洸暉が再びペンをとった。
ノートの余白になにごとか書きつける。
z = a + bi
なにこれ、と素直に問うた。
俺と———、と数式に目を落としたまま彼が答える。「ヒズミ」と。
疑問符が蜂のように脳内をブンブン飛び回る。
この未知の数式と自分と洸暉になんの関係があるんだ?
パタンと疑問を封じるように、彼がノートを閉じた。
視線をこちらによこして「送ってく」と短く告げる。不思議と静かな目をしていた。