きらめく星と沈黙の月
「夏は高熱で思うように投げられなかったエースが、悔しさをバネに春の甲子園への出場権を獲得。お涙ちょうだいのキラキラ青春ストーリーだと思いません?」


…何言ってんの、この子。


最近大人しいと思ったけど、やっぱり性根は腐ったままか。


「…この部活では誰も私を見てくれない。皆、甲子園っていう幻影ばかり見てる」


「は?」


思わず低い声が出た私の腕を陽菜が小突いた。


「サッカー部とは大違いで残念。こんなつもりでマネージャーになったんじゃないのに」


鈴宮さんは、グラウンドを駆け回る部員を眺めながら無表情で続ける。


「もっとチヤホヤされると思ってました。私、可愛いし、人から好かれやすいタイプなので」


無視だ、無視。


こんな女の独り言に付き合ってるほど暇じゃない。


「つまらんない部活だなぁ。入って損しちゃった」
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