きらめく星と沈黙の月

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結局、桜子は隠蔽の強要を認めた。


そして、藤北の甲子園出場は幻となった。


「すみませんでした」


いつもはすぐに練習着に着替えて練習を始めるけど、今日はそんな気分になれなかった。


制服のままミーティングに参加している人は俺以外にも数人いる。


夏以降特に頑張っていたメンバーだ。


「本当にごめんなさい」


部員の前で桜子が深々と頭を下げている。


正直、謝罪にはなんの価値も感じない。


もう、辞退は決まった。


甲子園に行けないことが決まった。


もう遅い。


「隠蔽の強要がなければ、最悪の事態は避けられたかもしれないって考えてしまう」


制服姿の龍が放った言葉は、俺の気持ちを完全に代弁してくれていた。


桜子だけが悪いとは思わないし、元凶は松平。


それは間違いなくそうだけど、でも…。


隠蔽さえなければ、除名だけで済んだんじゃないかって考えてしまう。
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