きらめく星と沈黙の月
「勝った……勝ったんだ…」


内野手、外野手、ベンチ選手、皆が碧の元へ駆けていく。


大きな歓声と、盛大な拍手に包まれた今の気分は夢見心地だ。


本当に優勝…。


優勝なんだ……。


へなへなと腰の力が抜けていく。


ドサッと落ちたスコアブックには、今までの軌跡が刻み込まれている。


去年の夏の挫折。


春先の不祥事。


悔しい思い、苦しい思いに耐え、ついに掴んだんだ。


碧が夢見ていたこの勝利を…掴み取ったんだ。


時には涙を流し、ぶつかり合い、対立もあったけれど、最後には一つになって…。


「碧…っ」


碧は、ダイヤモンドの真ん中に立ち、人差し指を青空に向かって突き上げていた。


そこに合わさるたくさんの手と手。


「おめでとう…っ」


おめでとう、碧。


そして…約束を果たしてくれてありがとう。


皆にクシャクシャにされるなか、碧は私に微笑みかけてくれた。


“ありがとう”


口パクのメッセージ付きで─。





私たちの夏は終わらない。


まだまだ一緒に、戦うんだ。


甲子園という夢の舞台で─。




少しでも長い夏を、碧と─…。
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