周王 龍巳を怒らせるな
君の全てを僕にちょうだい
穂華は思う━━━━━━━
本当に不思議だ。

眉目秀麗、文武両道。
こんなにこの四文字熟語がぴったりはまる人が、この世にいるなんて。

しかもそんな人が、自分の恋人だなんて━━━━━

ことの始まりは、彼と出逢った八ヶ月前だった。

出逢いはありきたりだ。
穂華が勤めている会社の、同僚に誘われた合コン。
相手が一流商社ということで、みんな気合いが入りまくりだった。
そんな中、穂華だけはごく普通におしゃれして参加していたのだ。

どうせ気合いを入れたところで、見向きもされない。
だったら、美味しい食事を満喫しようと思っていた。
(食事は、全て相手方の奢りだと聞いたから)

レストランに行った時、先に龍巳達が来ていて、穂華はいや…女性全員が一瞬で龍巳に目が奪われた。

こんな綺麗な人がこの世に存在しているのかと、疑う程の整った容姿。
爽やかな笑顔。
もう心が奪われ、放れなかったのだ。

でもアプローチできるわけがない。
穂華は地味で自分に自信がない上、美里と言う先輩社員に
「私が周王さんにアプローチするから、手を出さないで!」
と釘を刺された為、何もできなかったのだ。
その日は食事だけ楽しみ、別れた。

でもそれから五日程たった頃。
美里先輩が突然、会社に来なくなったのだ。

「ねぇ…美里先輩、失踪したって知ってる?」
「え……」
「合コンした日に周王さんと連絡先交換して、いい感じだったのに……」
「でも昨日も幸せそうにしてたから、お付き合いして幸せなのかと…」
「だよね。
どうしてかな?」
「………なんか、怖いね…」
会社の同僚で友人・希里の話に、身体をブルッと震わせて話す穂華だった。
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