周王 龍巳を怒らせるな
嫌がっても、放さないからね
「君…いい度胸だね……
わかった。相手してあげるよ?
ただ今は穂ちゃんとデート中だから、後からね……!
大丈夫。今日中に迎えに行くよ」
俊の耳元に口を近づけ、耳打ちした龍巳。

「穂ちゃん!手当てするよ?
おいで?」
そう言って、穂華を優しく立たせ腰をもって帰路に促した。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
自宅マンションに戻った、二人。
「穂ちゃん……痛む?」
「ううん。全然!大丈夫だよ!」
龍巳が丁寧に傷の手当てをし、カットバンの上からキスをした。
先程の龍巳とは正反対だ。
こんなに優しく触れる彼が、俊を片手で押し付けていた。

「た、たっちゃん、ごめんね…
せっかくのデート台無しにして……」
「穂ちゃんのせいじゃないでしょ?
でも、酷い人達だったね…」

「後から考えるとね……
私、利用されてただけだったんだなって思うんだ。
彼、思い通りにならないと嫌がる人で、私もよく怒られてたの。
よく考えるとそんな人達ばっかと付き合ってて、たっちゃんみたいな人……初めてなの。
だから、不安になるし、嫌われたくないって思ってすぐに謝っちゃうの」
「穂ちゃん…もう大丈夫だよ?
穂ちゃんは信じられないみたいだけど、穂ちゃんのこと本気で好きなんだ!
だから、僕は一生…穂ちゃんから放れないよ!
嫌いになんてならないって誓えるよ!」

「うーー
たっちゃん…ありがとう……!」
自然と涙が出た、穂華。
正直、龍巳が怖い。
あの俊を片手で押し付けられる程の龍巳が。
でもそれ以上に、龍巳の優しさが穂華の心を益々奪っていた。

「泣かないで?
あ、覚悟してね!
絶対、一生…放れないし放さないからね……」
涙を親指で拭い、頬を両手で包む龍巳。
そして力強く抱き締めた。

「忘れないで……?
ほんとに放さないから……
穂ちゃんが、嫌がってもね………」

もう一度、呟いた龍巳だった。
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