周王 龍巳を怒らせるな
厘のヤクザ事務所で、シャワーを浴びている龍巳。
マンションに帰る前に、頭と身体を冷やす為だ。

シャワーが済み出ると、厘がソファに座って煙草を吸っていた。
「大丈夫ですか?キング」
「うん」
そう言って、向かいのソファに座り龍巳も煙草を咥えた。
「まさか、挑発してくるとは思いませんでしたね……」
「だね。びっくりだね」
厘の言葉に火のついてない煙草を咥えたまま、天井を見上げ龍巳が答えた。

「穂ちゃんと俺って…」
「え?」
「つり合わないの?」
「は?」
「穂ちゃんがさ、物凄く気にしてるんだよね……」
「失礼を承知で言いますが……」
「うん」
「つり合わないと思います」
「だよね」
「もちろん、外見の話じゃないですよ」
「フッ…それだったら、厘のこと殺すよ…!
まぁ…穂ちゃんは外見の話を言ってるみたいだけど……」
「穂華さんに、キングは無理だと思います。
穂華さんは“普通”の女性です。
ほんとなら、こんな世界に連れ込んでいい人ではないはずです。
でも………」
「でも?」
龍巳が天井を見上げていた体勢から、厘に向き直った。

「無理ですよね?
今更……解放してあげること」
厘が真っ直ぐ、龍巳を見て言った。
「フッ…ほんっとに、厘は凄いね!さすが若頭だね~
……………
好きなんだ……穂ちゃんのこと…本気で………
合コン…行かなきゃよかった。
そうすれば、こんな心を抉られるような思いしなくて済んだのに………」
苦しそうに、顔を歪ませる龍巳だった。

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