周王 龍巳を怒らせるな
「告白されたんだ。
でも、長月さんが好きだって断ったら急に目の敵にしだしてさ!」
「え……」
「長月さん、俺に助けを求めてくれるかなってそのままにしてたけど、一生懸命耐えてたね…!
まぁそこがまた、可愛かったなぁ~」

一式のことを慕っていたのは事実だ。
しかし、こんな風に思われていたなんて……
高美先輩のことも、利用したような発言。
穂華は悔しかった。
悔しくて、涙が溢れそうになっていた。

「おっ!泣く?
いいよ、泣いてよ!可愛いー」
「離して下さい!
もう、話をしたくありません!」
「は?
この状況で何言ってんの?」
「ちょっ…やだ…!」
急に鎖骨に吸い付かれた。

「あ…ついた…
これ、彼氏に見せられないね……」
「え?嘘……どうしてこんな……」
「この俺を振ったから」
「え?」
「俺……振られたことないんだよね?
結構傷ついたなぁ」
「酷いです。こんな……」

「とにかく、その気になったら言ってよ!」
そう言って、会議室を去っていった一式だった。


昼休みになり、貴重品だけ持った穂華は外に出た。
会社エントランスに人集りが出来ていて、龍巳が煙草を吹かしながら待っていた。
気の小さい穂華。
穂華はいつもその中に入れない。

でも今日は違った。
「たっちゃん!」
「あ、穂ちゃん!」
嬉しそうに駆け寄ってくる、龍巳。

穂華は龍巳に抱きついた。
「穂…ちゃん…?
どうしたの?」
「たっちゃん…ギュッてして?
お願い……」
「うん、もちろん!」
人目もはばからず、二人は抱き合っていた。

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