雨の日、彼の秘
学校が終わると皆すぐ帰っちゃう。
紅葉には友達なんかいないから、一緒に帰る人がいない。
だけどそんなの気にしない。
放課後の教室から窓を眺めると、ザァーという音だけが耳に響いて、よけいに帰りたくなくなった。
今日は傘を持ってこなかった。
天気予報は雨ってちゃんと教えてくれたけど、紅葉は傘を持っていかなかった。
「…なにをしているんですか」
「いま帰らないともっと雨が強くなりますよ」
突然聞こえた声の方を振り向くと、そこにいたのは数学の碧先生だった。
…カッパ姿の、碧先生。
「…ぶはっ…」
思わず吹き出しちゃった。
全身カッパに包まれて、しっかり帽子のヒモをきゅってしめてるから、てるてる坊主みたいになってる。
「せんせー、てるてる坊主みたい!」
「…そうですか」
「傘はありますか?あなたのことだから、どこかでなくしたりしてませんか」
「……大丈夫!」
えへへ、本当は持ってきてないけど。
紅葉が傘を持っていることを確認した碧先生は、表情をひとつも変えることはなく教室を出ていった。
うーん。やっぱり不思議な人。
なに考えてるのか、全然わかんない。
紅葉のことたくさん注意するくせに、自分はてるてる坊主だし。
…ん?てるてる坊主は関係ないか…
ごめん碧先生。
けどちょっと気になるから…
紅葉、てるてる坊主を尾行いたします!!
ちょっとくらい…いいよね?
少しくらい、先生の秘密とか見てみたい。